商品をカートに入れたのに、10人中7人が買わずに離れていく

ECサイトを運営していて、管理画面の数字を見てこう思ったことはないでしょうか。「アクセスもある、商品もカートに入れてくれている。なのに売上が伸びない」。

Baymard Instituteの調査によると、ECサイトの平均カート離脱率約70%です。つまり、商品をカートに入れた10人のうち7人が、購入を完了せずにサイトを離れています。同調査の2025年改訂版では、モバイル端末に限ると離脱率は**約85%**にまで上昇し、スマートフォン経由の購入体験がいかに改善余地が大きいかを示しています。

この数字は裏を返せば、カゴ落ち対策を徹底するだけで大幅な売上増が見込めるということです。新規集客のために広告費を増やすよりも、すでにカートまで到達した見込み客を購入に導くほうが、はるかにコスト効率が良い施策です。経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」によると、日本のBtoC-EC市場規模は24.8兆円に達しており、カート離脱改善による売上インパクトは年々大きくなっています。

京谷商会でも、自社の酪酸菌青汁ECプロジェクト(aojiru.kyotanishokai.co.jp)で、カート離脱率の改善に継続的に取り組んでいます。本記事では、その実践から得られた知見と、業界の最新調査データに基づいた具体的な対策を解説します。

離脱の原因トップ3と、それぞれの対策

原因1:「送料や手数料が想定より高かった」

Baymardの同調査では、カート離脱理由の第1位が「追加コスト(送料・手数料・税金)が高すぎた」で、全体の48%を占めています。

商品ページで見た価格と、カート画面で表示される合計金額に差があると、ユーザーは裏切られたと感じます。対策として、送料は商品ページの段階で明示してください。商品一覧や商品詳細ページに「送料○○円」または「○○円以上で送料無料」を目立つ位置に表示するだけで、カートでの離脱を大きく減らせます。

「送料無料」の基準を設けることも効果的です。平均注文単価が5,000円なら、7,000円以上で送料無料とすることで、ついで買いを促進しつつ離脱率を下げられます。さらに、カート画面に「あと○○円で送料無料」とプログレスバーを表示する手法は、客単価を平均12〜15%引き上げるというデータもあります。

酪酸菌青汁プロジェクトでは、商品ページの上部に「全国一律送料」を明記し、定期購入の場合は送料無料とする設計を採用しています。これにより、カート画面で「思ったより高い」と感じさせるギャップを排除しています。

原因2:「会員登録が必要だった」

ECサイトで購入するためにアカウント作成を強制されると、24%のユーザーが離脱するというデータがあります。

最も効果的な対策は「ゲスト購入」の導入です。会員登録しなくても購入できる選択肢を用意するだけで、この離脱を大幅に減らせます。会員登録は購入完了後に任意で案内すれば、ユーザーにストレスを与えずに会員獲得も可能です。

Shopifyのチェックアウト設計ガイドでも、ゲスト購入オプションの提供が強く推奨されています。加えて、Baymard Instituteのチェックアウトフロー調査では、入力フォームの項目数を12個以下に抑えるとCVR(コンバージョン率)が有意に改善することが報告されています。名前・住所・メールアドレスなど必須項目以外は極力削減しましょう。このようなフォーム改善はEFO(入力フォーム最適化)と呼ばれ、カート離脱率改善の基本施策の一つです。

原因3:「決済手段が限られていた」

希望する支払い方法がないために離脱するユーザーは13%に上ります。クレジットカードだけでなく、Amazon Pay、PayPay、コンビニ後払いなど、複数の決済手段を用意することが重要です。

特に2026年の日本市場では、QRコード決済の利用率が急伸しています。キャッシュレス推進協議会のデータによると、コード決済の月間取扱高は10兆円を超え、ECサイトでもPayPay・楽天ペイ・d払いへの対応が購入率に直結しています。経済産業省のキャッシュレス・ビジョンでも、2025年までにキャッシュレス比率40%を目指す政策が推進されており、EC事業者として多様な決済手段への対応は経営課題です。

京谷商会の酪酸菌青汁プロジェクトでは、KOMOJUを決済代行サービスとして導入しています。クレジットカード(3.25%)、コンビニ決済(2.75%)、PayPay(3.5%)、銀行振込(1.4%)を一括で提供でき、初期費用・月額費用が無料のため、立ち上げ期の固定費を抑えながら決済手段を充実させることが可能です。

BtoBのECサイトでは、「請求書払い(掛け売り)」への対応が購入の障壁を大きく下げます。Paidyの法人向けプランやNP掛け払いなどのサービスを導入することで、法人顧客の決済ハードルを解消できます。

モバイルチェックアウトの最適化——離脱率85%に立ち向かう

冒頭で触れた通り、モバイル端末でのカート離脱率は約85%とデスクトップを大きく上回ります。2026年現在、日本のECサイトへのアクセスの約75%がスマートフォン経由である以上、モバイルチェックアウトの最適化は売上を左右する最重要課題です。

タップしやすいUI設計

モバイルでの離脱を防ぐためには、指での操作に最適化されたUI設計が不可欠です。Google「Page Experience」のガイドラインでも、モバイルフレンドリーなページ設計がユーザー体験とSEOの両面で重視されています。

具体的なチェックポイントは以下の通りです。

  • CTAボタン(「購入に進む」等)は親指が届く画面下部に固定配置し、タップ領域は最低48×48px以上を確保する
  • フォーム入力欄は十分な高さ(44px以上)を取り、タップ時に適切なキーボード(数字入力にはnumeric、メールにはemail)が表示されるようinput typeを正しく指定する
  • カート内商品の数量変更や削除が、ピンチ・スワイプなしの1タップで完結するようにする
  • ページ遷移の回数を最小化し、可能であればカート→決済を1ページに統合する(ワンページチェックアウト)

オートフィルと決済UIの簡素化

住所入力の自動補完(郵便番号→住所自動入力)は、モバイルでは特に効果が大きい施策です。小さなキーボードでの長文入力は離脱の直接的な原因になるため、入力項目そのものを減らすことに加え、Google Autofill対応のフォーム設計(autocomplete属性の適切な指定)を行いましょう。

Apple Pay・Google Payなどのウォレット決済に対応すれば、住所・カード情報の入力を完全にスキップできます。Baymard Instituteのモバイルチェックアウト調査では、ウォレット決済対応サイトはモバイルCVRが平均20%以上向上したと報告されています。

ページ表示速度が離脱率に与える影響

見落とされがちですが、ページの表示速度もカート離脱に大きく影響します。Google「Web Vitals」のドキュメントによると、ページの読み込みが1秒遅くなるごとにコンバージョン率が約7%低下するとされています。

特にカートページや決済ページの表示速度は重要です。以下を確認してください。

  • LCP(Largest Contentful Paint)が2.5秒以内に収まっているか
  • 決済ページで不要な外部スクリプト(チャットウィジェット、ポップアップツール等)が読み込まれていないか
  • 商品画像がWebP形式で適切に圧縮されているか
  • モバイル回線(4G環境)でも3秒以内にカートページが操作可能になるか

Google PageSpeed Insightsで自社ECサイトのカート・決済ページを計測し、スコアが50未満であれば早急に改善すべきです。酪酸菌青汁のLPはCloudflare Pages上で運用しており、自動画像最適化とグローバルCDNにより、モバイルでも高速なページ表示を実現しています。

カート離脱者を呼び戻す仕組み

離脱を減らすだけでなく、離脱した人を呼び戻す施策も並行して実施します。

カート放棄メール

カートに商品を入れたまま離脱したユーザーに対して、1〜3時間後にリマインドメールを送る仕組みです。Klaviyoの調査によると、カート放棄メールの平均コンバージョン率は3〜5%で、通常のメルマガの10倍以上の効果があります。

メールの内容は、カートに残っている商品の画像、価格、そして購入ページへの直接リンクを含めたシンプルなものが最も効果的です。3通シリーズ(1時間後・24時間後・72時間後)で送ると、単発送信と比較して回収率が約40%向上します。

京谷商会では、メール配信にBrevoを活用し、カート放棄からの時間に応じたシーケンスメールの自動配信を設計しています。1通目は商品のリマインド、2通目は送料無料や限定割引の案内、3通目は在庫僅少の通知という3段構成で、段階的に購入動機を強化する手法を採用しています。

リターゲティング広告

カートページまで到達したユーザーに対して、Meta広告やGoogle広告でリターゲティングを行います。カート到達者は購入意欲が高いため、通常のリターゲティングよりもさらに高いコンバージョン率が期待できます。Google広告のリマーケティングガイドを参照し、カート到達者専用のオーディエンスリストを作成して配信精度を高めましょう。

Web接客ツールの活用

離脱の瞬間を捉えて引き止める「Web接客」も有効です。ユーザーがブラウザのタブを閉じようとした瞬間(Exit Intent)にポップアップを表示し、クーポンや送料無料の案内を出す手法です。OptinMonsterの調査によると、Exit Intentポップアップはカート離脱率を最大10〜15%改善できるとされています。

ただし、表示タイミングや頻度を誤るとユーザー体験を損なうため、以下のルールを守ることが重要です。

  • 表示はカートページ・決済ページに限定し、商品閲覧中には表示しない
  • 1セッションにつき1回のみ表示し、閉じた後に再表示しない
  • モバイルではExit Intentが検出しにくいため、カート滞在時間(例: 60秒以上操作なし)をトリガーにするなど、別のロジックを設計する
  • ポップアップ内のCTAは1つに絞り、「クーポンを使って購入する」のような明確なアクションボタンを配置する

決済フォーム最適化のチェックリスト

離脱対策の各施策を実行する前に、まず自社ECサイトの決済フォームが以下の基準を満たしているか確認してください。

チェック項目合格基準
入力フォームの項目数12個以下(住所自動補完を含む)
ゲスト購入会員登録なしで購入完了可能
決済手段の数クレカ+2種類以上(QR決済・コンビニ払い等)
送料の表示タイミング商品ページで明示(カート画面で初めて表示はNG)
モバイルCTAボタン画面下部固定、48px以上のタップ領域
エラー表示リアルタイムバリデーション(送信後にまとめて表示はNG)
ページ表示速度カートページのLCP 2.5秒以内
[3Dセキュア](https://ecm.kyotanishokai.co.jp/glossary/3d-secure/)対応EMV 3-Dセキュア(3Dセキュア2.0)に対応済み

まとめ——カート離脱率の改善は「最も投資対効果の高いEC施策」

カート離脱率の改善は、ECサイトの売上を伸ばす最も費用対効果の高い施策です。新規集客に予算を追加する前に、すでにカートまで到達してくれた顧客を逃さない仕組みを整えてください。

京谷商会の酪酸菌青汁プロジェクトでも、送料の事前明示、KOMOJU決済による多決済手段対応、Cloudflare Pagesによるページ高速化、Brevoを活用したカート放棄メールの自動配信といった施策を組み合わせることで、カート離脱率の継続的な改善に取り組んでいます。

まずは今週、以下の3つから着手してみてください。

  1. 自社ECサイトのカート離脱率を計測する(GA4の「カート放棄率」レポートで確認)
  2. 商品ページに送料情報が明示されているかチェックし、なければ追加する
  3. 決済手段がクレジットカードのみなら、KOMOJU等の決済代行サービスでQR決済・コンビニ払いを追加する

その1つの改善だけでも、売上の変化が見えるはずです。